【ITエンジニア転職講座 第7回】オファー面談。提示年収を100万円上げる「聖域なき」交渉術

そのサイン、ちょっと待った。「提示額」は決定事項ではありません。

こんにちは!「LINUX工房」管理人の「リナックス先生」です。
前回は、難関である技術面接(ライブコーディング)を突破する方法について解説しました。
そしてついに、あなたの手元には企業からの「内定通知書(オファーレター)」が届いていることでしょう。

「やった! 内定だ! 年収も今より50万円アップしてるし、すぐに承諾しよう!」
……ちょっと待ってください。
そのハンコを押す前に、やるべきことが残っています。
それは、エンジニアとしてのあなたの価値を正当に評価してもらうための「条件交渉」です。

コウ君

先生、内定もらえました! 第一志望の企業です!
提示年収は600万円。今の会社が550万円なので50万円アップです。
でも……実はエージェント経由で受けた別の会社からは650万円のオファーが来ているんです。
第一志望に行きたいけど、50万円の差はデカイなぁ。
「もっと給料上げてください」なんて言ったら、内定取り消しになりそうで怖くて言えません……。

リナックス先生

コウ君、おめでとう!
でも、そこで遠慮しちゃダメよ。企業が出してくる最初の金額は「下限」であることが多いの。
彼らだって、優秀なエンジニアを採用するために「予算のバッファ(予備費)」を持っているわ。
適切な手順で交渉すれば、内定取り消しなんてされないし、むしろ「ビジネス感覚がある」と評価されることだってあるの。
今回は、その50万円の差を埋める、いや、それ以上を引き出すための「大人の交渉術」を教えるわ!

本記事では、オファー面談の目的と心構え、具体的な年収交渉の会話スクリプト、年収以外の条件(ストックオプションやサインオンボーナス)の引き出し方、そして現職からの引き留めをかわす退職交渉まで、転職活動の「クロージング」を徹底解説します。


第1章:オファー面談とは?「選考」ではなく「商談」である

内定が出た後に設定される「オファー面談(処遇面談)」。
ここで勘違いしてはいけないのは、これはもう「面接(選考)」ではないということです。
企業はあなたを「欲しい」と言っています。あなたは「入るかどうか迷っている」状態です。
つまり、パワーバランスは対等、あるいはあなたの方が上なのです。

オファー面談で確認すべき項目

提示された「労働条件通知書」を見ながら、以下の項目を必ずチェックします。

  1. 理論年収の内訳:
    • 月給 × 12ヶ月 + 賞与(固定か業績連動か?)
    • 固定残業代(みなし残業)は含まれているか?(「年収600万」と言われても、45時間分の残業代込みなら基本給は低くなります)
  2. 評価制度:
    • 昇給のタイミングは年何回か?
    • 平均的な昇給幅はどれくらいか?
  3. 福利厚生:
    • 家賃補助、リモートワーク手当、書籍購入費、カンファレンス参加費など。

内定取り消しのリスクは?

常識的な範囲での交渉であれば、内定取り消しになることは法的に見ても、企業のレピュテーション(評判)リスクから見ても、まずあり得ません。
ただし、「態度が横柄」「嘘をつく(他社の提示額を盛る)」といった不誠実な対応をすれば、その限りではありません。
あくまで「一緒に働くパートナーとしての対話」を心がけましょう。


第2章:交渉の準備。自分の「市場価格」をデータで武装せよ

「なんとなくもっと欲しい」という感情論では、企業は財布の紐を緩めません。
論理的な根拠(データ)が必要です。

1. 自分の市場価値(相場)を知る

2026年現在、エンジニアの給与データベースは非常にオープンになっています。
以下のサイトを使って、「自分と同じスキルセット・経験年数のエンジニア」がどれくらい貰っているかを調べましょう。

  • OpenSalary: テック企業のリアルな年収分布が見られます。
  • Levels.fyi: 特に外資系企業のグレードごとの年収(基本給+RSU)が詳細に分かります。
  • jobTag (厚生労働省): 日本全体の平均値を知るのに役立ちます。

「御社の提示額600万円は、同業他社の同グレード(中央値650万円)と比較して低いようです」という客観的な事実は強い武器になります。

2. BATNA(バトナ)を用意する

交渉学の用語で **”Best Alternative to a Negotiated Agreement”(交渉が決裂した際の最良の代替案)**のことです。
転職におけるBATNAとは、ズバリ「他社の内定」または「現職に留まること」です。

「もし交渉が決裂しても、私には650万円のオファーを出しているB社がある」という余裕が、交渉力を劇的に高めます。
だからこそ、第一志望の最終面接前には、他社の選考を進めておく(内定を持っておく)ことが戦略的に重要なのです。


第3章:実践スクリプト。提示額をアップさせる魔法の言葉

では、具体的な会話例を見ていきましょう。
ポイントは、「御社が第一志望である」という熱意を見せつつ、「条件面だけがネックである」と伝えることです。

パターンA:他社の方が高いオファーを出している場合

あなた:
「高い評価をいただき、ありがとうございます。開発チームの雰囲気やビジョンには非常に共感しており、ぜひ御社で貢献したいと考えています(熱意)。
ただ、正直に申し上げますと、並行して受けているB社様から年収650万円のオファーを頂いております(事実)。
私としては、事業内容やカルチャーの面で御社を第一志望と考えているのですが、生活水準や家族のことを考えると、条件面で迷いがあります(ネック)。
もし、年収を650万円、あるいはそれに近い水準まで再考していただくことは可能でしょうか? もし調整いただけるなら、B社様をお断りして、その場で御社への入社を即決いたします(交換条件)。」

解説:
「金額を合わせてくれたら即決する」というカードは最強です。
採用担当者も「あと少し予算を出せば確実に入社してくれる」と分かれば、上司や決裁者を説得しやすくなるからです。

パターンB:他社の内定がない場合

あなた:
「ご提示ありがとうございます。御社の提示額(600万円)は、現職(550万円)からのアップ幅としては理解できるのですが、市場相場や私の持つ〇〇のスキル(AWS設計、チームマネジメント等)を考慮すると、少し評価が保守的ではないかと感じています。
OpenSalaryなどのデータでは、同等のポジションの相場は650万円前後となっております。
入社後のパフォーマンスで貢献することは約束しますが、スタート時の評価として、630〜650万円程度をご検討いただけないでしょうか?」

解説:
他社オファーがない場合は、「市場相場」と「自分のスキルの希少性」を根拠にします。
「生活が苦しいから上げてくれ」という個人的な理由は通用しません。


第4章:年収以外で勝負する。RSUとサインオンボーナスの活用

企業の給与テーブル(等級制度)が決まっていて、どうしても基本給(ベース給)を上げられないケースがあります。
その場合でも諦めてはいけません。
「一時金」「株式」で調整できないか打診しましょう。

1. サインオンボーナス(入社支度金)

「基本給は規定で動かせないが、入社祝い金として100万円出すなら裁量の範囲内でできる」というケースは意外と多いです。
これは初年度年収を押し上げる効果があります。

交渉フレーズ:
「基本給の調整が難しいことは理解しました。では、転職に伴う引っ越し費用や、賞与の切り替え時期による一時的な減収を補填する意味で、サインオンボーナスをご検討いただけないでしょうか?」

2. RSU(譲渡制限付株式ユニット) / ストックオプション

テック企業やスタートアップでは、現金ではなく株式での報酬が一般的になっています。
特にRSUは、数年かけて権利が確定(Vesting)するため、企業にとっては「長く働いてもらうための動機づけ」になり、交渉しやすい項目です。

交渉フレーズ:
「御社の将来性に賭けてみたいと思っています。キャッシュでのアップが難しいようであれば、ストックオプションやRSUの付与数を調整いただくことは可能でしょうか?」


第5章:エージェントは敵か味方か?交渉代理の裏事情

転職エージェントを利用している場合、年収交渉は彼らが代行してくれます。
しかし、彼らを全面的に信用するのは危険です。

エージェントのインセンティブ構造

エージェントの報酬は「あなたの決定年収の約35%」です。
年収が上がれば彼らの報酬も増えるので、基本的には味方です。
しかし、「年収交渉をして内定が破談になるリスク」を極端に恐れます。
「600万円で決まりかけているのに、650万円をふっかけて破談になるくらいなら、600万円で確実にサインさせたい」というのが彼らの本音です。

エージェントを動かす方法

エージェントに「弱気」を見せてはいけません。

  • NG: 「まあ、600万円でも御社がそう言うなら……」
  • OK: 「650万円にならなければ、辞退して自力で探すか、現職に残ることも検討しています(本気)。交渉をお願いできますか?」

あなたが強気の姿勢を見せれば、エージェントは必死になって企業側を説得しに行きます。
「この候補者は他社にも引き合いがあって、650万円出さないと逃げられますよ!」と企業を煽ってくれるのです。


第6章:退職交渉の泥沼。引き留め工作(カウンターオファー)の断り方

交渉が成立し、オファーを承諾しました。
最後に待っているのが、現職への「退職届」の提出です。
ここで多くの人が心を揺さぶられます。

カウンターオファー(引き留め)の罠

「辞めるなんて言わないでくれ。給料を上げるから」「希望していた部署に異動させるから」。
上司は必死に引き留めてきます。
しかし、統計的に見ても、カウンターオファーを受けて残留した人の約80%は、1年以内に結局退職しています。

なぜ残留してはいけないのか:

  • 不信感: 「辞めると言わないと待遇を改善しない会社」であることが露呈しただけです。
  • レッテル: 一度「辞めようとした裏切り者」というレッテルが貼られ、今後の昇進や重要なプロジェクトから外される可能性があります。

円満退職のための鉄則

  1. 相談ではなく報告: 「辞めようか迷っています」ではなく「辞めます(決定事項)」と伝えます。
  2. 理由はポジティブに: 「給料が安いから」と言うと「上げるから」と言われます。「新しい領域(AIなど)に挑戦したいという夢がある」と、会社側では叶えられない理由を伝えます。
  3. 書面で出す: 口頭だけだと有耶無耶にされます。退職届をメールまたは書面で提出し、証拠を残します。

まとめ:自分の価値を守れるのは自分だけ

お疲れ様でした。
第7回では、転職活動のクライマックスである年収交渉と退職交渉について解説しました。

今回の重要ポイント:

  • 提示されたオファーは「下限」である。必ず交渉の余地がある。
  • 「他社オファー」という最強の武器(BATNA)を持って交渉に臨む。
  • 基本給が無理なら、サインオンボーナスやRSUでトータルを上げる。
  • 現職の引き留め(カウンターオファー)には絶対に応じない。
リナックス先生

お金の話をするのは「卑しい」ことじゃないわ。
自分の技術力に対する「正当な対価」を求めるのは、プロフェッショナルとしての義務よ。
あなたが安売りすれば、業界全体のエンジニアの地位を下げることにもなるの。
胸を張って交渉してきてね!

無事に退職し、新しい会社への入社が決まりました。
しかし、転職は「入社して終わり」ではありません。
入社後の3ヶ月間(試用期間)で成果を出せなければ、「使えない」と判断され、居場所を失うリスクがあります。

次回、いよいよ最終回(第8回)は「入社後。試用期間を突破し、即戦力として定着するロードマップ」です。
新しい環境で最速で信頼を勝ち取るための「最初の90日」の過ごし方を伝授します。お楽しみに!

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